坪井美香(語り)
舞台を清め、公演の無事と成功を祈り、神々へ花を捧げます。
目・首・肩などの細部の動きから、身体全体の動きへと広がりをみせます。
その様子は、蓮の花の蕾が次第に開いていく様子にたとえられています。
「スマサーヤカ」の登場人物は3人。若くて美しいヒロイン、その恋人パドマナーヴァ、そして、ヒロインの女友達サキ。ヒロインは恋人のパドマナーヴァを待って待って待ち続けているのですが、いくら待っても愛しい人は現われません。「パドマ」とは蓮のこと。パドマナーヴァという名前は「おへそから蓮が生えた人」という意味で、ヒンズー教の3大神ヴィシュヌ神の別名です。恋に傷ついたヒロインは、その胸の内を、女友達のサキに訴えます。彼女は恋人との逢瀬を夢に見て、想像して、友達のサキに話しているうちに、自分でもそれが夢か現か、わからなくなってしまうのです。
ヒンドゥー教の3大神といえば、ヴィシュヌ神、ブランマー神、そして、世界の破壊と創造を司ると言われているシヴァ神です。そのシヴァ神が踊りの名手として化身した姿がナタラージャ神で、108種類に及ぶダンスを踊るといわれています。
あるヒマラヤの夕暮れ、たくさんの神々が踊りを見に集まってきました。ヴィシュヌ神が太鼓を叩き、ブランマー神がシンバルをたたき、ナタラージャ神は足を高く振り上げ、死と再生を表現するターンダバダンスを、熱狂的に踊りました。妻のパールバティーは、自分には出来ない男性的なエネルギーに満ちた踊りを見て、とても嫉妬をしました。しかし、ナタラージャ神はそんな妻の様子には目もくれず、また、自分のイヤリングが落ちた事にも気づかず、踊り続けました。
叙事詩「ギータ・ゴーヴィンダ」より、クリシュナとラーダの愛の物語。
二人は共に妻や夫のある身なのですが、そんなことにはおかまいなし。
二人の愛はこの叙事詩に官能的に、耽美的に描かれています。
最後を飾るに相応しい、華やかな曲です。スピード感、複雑なリズムによる構成が見所です。
ダンサーは、持てる力を全て出しきり、満開の蓮の花を散らして舞台の終焉を迎えます。